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水域/漆原 友紀
水域(上) (アフタヌーンKC) 漆原 友紀 講談社 2011-01-21 |
はあああああ。(ため息)
この感想を、どうやって文章にして良いかわからなくて、最後まで持ち越してしまいました。
素晴らしい。
ひとことそういって終わりにしてしまいたい。何を言っても蛇足にしかならない気がする。
でもそれじゃあ全然伝わらないと思うので。。。
ダムに沈んだ村に住む家族の話です。
蟲師のギンコや淡幽のようなキャラクター漫画ウケする登場人物は出てきません。しかし、漆原先生だからこそ描けた人物たちだと思います。
(ちなみに、漆原先生の現代ものというと、「フィラメント」がありますが、比較にならないほど本作の方が素晴らしいです。)
そして、蟲師では、ギンコたちが蟲を介していのちとつながっていた様子が描かれていましたが、この作品ではより人間の話になっています。
それは「蟲」が出てこないからとかそういう話ではなくて、もっと、いのちの源流は人間の側に流れているという視点に立った話になっています。
蟲師のような幻想的な美しさではなく、もっと生々しく、いびつで荒っぽいいのちの姿がここにあります。
サンプル・キティ/明智 抄
死神の惑星/明智 抄
去る2011/11/29に吉田アミさん等が『明智抄ナイト!!!!』というイベントを企画されるということを知り、明智抄を商業/同人含めて殆どコンプしている同期の子がいることを思い出し、よし、彼女を誘って行こう!となったのがきっかけで再読しました。
当時のツイッターログ↓
- うおお、数日twitterみてなかった間に明智抄ナイトなんてものが!!! 明智抄担当のりんちゃんに声かけてみるか…!? しかも始末人シリーズではなく「サンプル・キティ」とは…高まる! posted at 07:23:53
- RT @amiyoshida: 11/29(火)大谷能生×吉田隆一と吉田アミのSFナイト・マン語り共同企画『明智抄ナイト!!!!』司会:中村賢治。ほんとにやるんだよ!大谷能生と吉田隆一のSF騎士(ナイト)コンビも大ファン!知る人ぞ知るあの傑作マンガを語りまくる!http://d.hatena.ne.jp/amiyoshida/20111112 posted at 07:24:56
- やった! りんちゃん食い付いてくれた! 行くぜ! 明智抄ナイト!! posted at 09:44:08
- 明智抄ナイトに向けて、りんちゃんから「サンプル・キティ」借りて再読してる。最初に読んだのは彼女と出会った頃だからもう七年位前で、そのときはあのシュールさが面白くて、SF人間ドラマとしての部分に集中できなかったんだけど、今再読するとそこも腑に落ちてくる感じ。良い。 posted at 12:11:43
- オザケンもスライムも空気読まずに(会社のビルのコンビニには普通に売ってたけど)明智抄ナイト行って来た。同行者も面白かったと言ってくれて良かった。 posted at 23:43:11
- アミさんは基本酔っ払っていたけど、デビュー作&その講評は同行人も食いついていたので良い仕事をしていただきました。タイムリミットで途中退出してしまい申し訳ありませんでした。 posted at 01:31:05
- SFナイトのお二人にはゼーガペイン、ノエイン、DDSAT(デジタルでビルサーガ アバタールチューナー)あたりをネタにゼロ年代中期の量子論SFアニメ&ゲームを語って頂きたいと思いました(既出でしたらすみません) posted at 01:33:24
明智抄作品は復刻も含めて全体的に入手困難なので、Amazonリンクは張らずに表紙画像載せておきます。
80年代白泉社らしい絵柄ですね。(棒)
サンプル・キティは乱暴に分類するならESPもの。みのもんたとファミカセとやきそばが飛び交うサイキック・ホームドラマ……って、分かんないですよね…orz
死神の惑星は、サンプル・キティとは独立した話ですが、微妙にリンクした世界の話です。美形の男の子がマフィアのお稚児さんになったりするので腐女子対応も万全です。
明智抄作品の感想を書くのはとても難しい。不条理ギャグとして読むこともできるし、SFとしても読めるし、ヒューマンドラマものとも読める。
作者は、人間のどうしようもないところやわけがわからないところを整理したり、説明したりすることなくそのまま原稿用紙の上に載せてしまう。
なので、不条理ギャグに見えるとしたら、それは人間の滑稽さに過ぎないし、そういうわけのわからなくてどうしようもないものを愛でてしまう、母性の物語であるっていうのがpsiの立ち位置だけど、それをもっと普遍的で概念的な人類全体に対する母性みたいな方向で解釈するなら、SFになる。
そして誰も正解を教えてくれない。登場人物は皆業の深い奴らで、その業に従って、正しいとか正しくないとか関係なく突き進んでいく。「だって晩御飯の献立考えるのに忙しいから」とか言いながら。だれもこれが正しいですとも言わないし、「こうあるべき」とか「これが正しいから」とかいう理由で動く人がいない。描きっぱなしである。
だから読む側としては非常に…なんというかまあ、控えめに言って面食らう。
知人の家でご飯をご馳走になったら生きてる魚丸ごと一匹皿に乗って出てきたみたいな感じだ。
それで「どうしろと!?」と思うのは至極真っ当なんだけど、でも、本当に毎回既に切り身にされた魚を焼き上げられた状態で皿に乗って出てくるのを待っているだけでいいんですか? って話。
セラフィム/今 敏
セラフィム 2億6661万3336の翼(リュウコミックス) [コミック] 押井 守 今 敏 徳間書店 2010-12-13 |
今敏回顧展に行ったら今監督熱が再燃して、帰り道に本屋で勢いで買った。
人を人ならざるものに変えてしまう謎の病、天使病――中二心をくすぐる単語使いである。どうやら天災的なものではなく、何がしかの陰謀に関係があるらしい。
その鍵を握ると見られる少女を連れ、旅が始まる。
押井守っぽい観念的でダークな世界でつかみはオッケー、今敏によって緻密に作りこまれた世界でしっかり下支えする。
この人の絵の上手さはハンパない。単に絵を描いたり漫画を描いたりするのに上手い人はたくさんいるけど、そのクオリティで絵コンテとか描く。頭おかしい。
そしてアニメのストーリーを作らせても押井守と双璧を成すオリジナリティとクリエイティビティを発揮する。
しかし悲しいかな、双璧であるがゆえに、押井とのシナジー効果を生むことはできず、この作品も未完のまま終わってしまった。
これが完結してアニメーション映画になったら、すさまじい作品になったことは間違いないのに、残念で仕方がない。追悼。
ストロボライト/青山 景
ストロボライト 青山 景 太田出版 2009-08-04 |
TMTのツタヤで見かけて、叙述トリックというか、構成がテクニカルっぽそうだなーと思って買ったその数ヶ月後に作者が自殺したのでびっくりした。
前回取り上げた朔ユキ蔵先生のアシスタントだったみたいですね。
内容は創作とか役者とかそっち系の大学生くらいの人にありがちな青春モノで、よしもとよしともをもっと青臭くして、陰鬱にした感じ。
表紙の女の子が可愛かったからもう少し明るい話かと思った。
漫画自体が上手いか上手くないかというより、主に自分側の問題で、こういう青春にグッと来る琴線が切れっぱなしで修復する気もないので、あまりピンとこなかった。
でも、それ系の琴線がまだきちんと張っている人は、グッと来ると思います。
青山先生のご冥福をお祈りします。
ハルシオンランチ/沙村 広明
ハルシオン・ランチ 1 (アフタヌーンKC) 沙村 広明 講談社 2010-03-05 |
四次元胃袋を持つリバース系宇宙人(美少女)が、リヤカーから怪獣まで食っちゃ吐き食っちゃ吐き、吐いて吐いてまた食いまくる。
善も悪も家族愛も性愛も孤独も絆も胃の中に入っちゃえば全部一緒くたです。
「無限の住人」の沙村広明が描くSFコメディ。
「国家も同じである!」のネタで有名になった作品ですね。
じつはpsiは「無限の住人」は序盤を借りて読んだものの、もう何年も買い揃えようか、またの機会にしようかとグダグダなやんでそのままです。
なのであまり「無限の住人」については詳しくないのですが、ああさすが「無限」なんてハードルの高くなる言葉をタイトルに入れるだけあって、わかってる、というか、わかってないことをわかってる人だなあという印象を受けました。
その人だからこそ、この作品が、ただのドタバタコメディというか、ただの宇宙スケール絶望先生に終わらず、作品としてきちんと成立しているのだと思います。
無限の住人、買い揃えるか……
乙嫁語り/森 薫
乙嫁語り(3) (ビームコミックス) 森 薫 エンターブレイン 2011-06-15 |
エイホン家の居候スミスさんがガイドのアリさんと一緒にアンカラに旅立とうとするのですが、ひょんなことから出合った後家さんが気になってしまい……
1,2巻で「中央アジアの意匠描きたい! ワッフル!」みたいなリビドーを吐き出した森薫先生、ようやくちょっと重心を物語の方へ移動させたのが3巻ですかね。
逆に、森薫のオタ臭をくんかくんかしたい方には、3巻では市場の回がオススメ。エイホン家の方々も加わっていろんなおいしいものを食いまくる、読んでて涎が出てくる描写力をご堪能ください。
それから、ツンデレ美少女パリヤさんのその後が気になって仕方ない諸兄にも、ちょっとだけ進展が。
本筋のスミスさんの件は、非常にこう、切ないながらも納得のいく結末となっております。
エマのときは途中までひたすらリアルに、現実主義的に進められていた話が、終盤急に少女マンガチックになり、うーん、ハッピーエンドにするにしても、もう少しなんか現実的な落としどころがなかったもんか(あ、もちろん、能天気なハッピーエンドではなく「これからが本当に大変なところだよ」的な余韻で締められてはいましたが)と、そこだけが残念でしたが、今回はそういうことは一切なしです。
民族の慣習は、外から見ると不合理だったり不条理だったりするわけです。
そんなこと言っても、当事者たちからしてみれば余計なお世話としか感じられない。
外から見ている人は、それ(余計なお世話と感じる)はそれ(部族の慣習、身の回りの文化)しか知らないからであるとか、そのために不利益をこうむったり不幸になったりしても、それでしょうがないと思ってしまうのは世界が狭いがゆえで、その慣習から自由になれば、より幸せになれるのだと思っている。もちろん、その土地で暮らす以上、その慣習から自由になることは容易ではない。そこが課題だと。
違います。
課題はそこじゃない。
昔ながらの民族・部族の慣習や掟に従う世界と、そうした掟が存在しない世界はシリアルに並べられて前者が後者の手前にあるというようなものではないと思うのです。
実際には、時代の流れに沿って、シリアルに移り変わっていくとは思いますが、それと、そこに住む人の幸福とは何の因果関係もない。
そしてまた、幸福という座標軸で見た場合、能力的に優れていることや、精神的に強く、分別があることが、愚かで、弱いことよりも先にあるのかというと、その差異もまたその座標軸においては何の相関もない、というか、ないはず。
乱と灰色の世界/入江 亜季
乱と灰色の世界 3巻 (ビームコミックス) 入江 亜季 エンターブレイン 2011-07-15 |
だんだん物語が加速してきました。わっしょい、わっしょい!
乱は同級生(乱に気がある)に正体がバレそうになり、陣は発情期で珊瑚とヤりまくり、凰太郎はますます乱とラブラブに。乱の(魔法の)先生は何しに来たんじゃ、という感じ。
1,2巻に多く見られた世界観を描くような話は殆どなく、恋のドタバタの話がメインです。群青学舎のピンク・チョコレートのノリといいましょうか。
入江先生もさすがに陣の話は苦情が来るのではないかと戦々恐々としていたみたいですが、そして実際色々言う人が居たみたいですが、でもさー、陣は狼なんだぜ? 当たり前じゃね? てかむしろ発情期におとなしくしてたらウソ臭くね?
というわけでpsi的には大歓迎です。
ていうかあのエステの先生、私も激しく予約したいんですが!
リューシカ・リューシカ/安倍 吉俊
リューシカ・リューシカ 1 (ガンガンコミックスONLINE) 安倍 吉俊 スクウェア・エニックス 2010-06-22 |
灰羽連盟の安倍吉俊による空想少女日常もの。
安倍吉俊が灰羽連盟の人だとは知らなかったので、買ったのは「リューシカのキャラがハンパなく良い」との本屋の店員オススメPOPがあったからなんだが。
フルカラーだし、絵も可愛いので買って損はないと思う。
リューシカのキャラもステレオタイプな萌えキャラではなく、どこかすっとぼけていて、それでいて確かに自分が小さい頃、こういうことを考えていた気がする、なのに大人はわかってくれなかった、というところをたくみに拾い上げている感じで悪くない。
「よつばと!」とよく比較されているみたいだが、psiは「よつばと!」最初読んだときにイマイチひっかからなくてそれ以降読んでないので似てるのかどうか良くわからない。
2010年のでいくつか洩れてるやつもありますが、2011年分は以上とさせていただきたいと思います。
長らくお付き合いいただきましてありがとうございました~