過去のコミックレビュー
- 2011 comic review 1 of 5
- 2009年下半期コミックレビュー
- 2007年まとめ 【コミック編】
- 良いお年を -2006年BEST-
- 矢印は発音記号です(2007年1Qまとめ)
- 2004年まとめ
- 2003年BEST
宇宙兄弟/小山 宙哉
宇宙兄弟(16) (モーニング KC) 小山 宙哉 講談社 2011-12-22 |
誰にでもオススメする度 ★★★★★
どんな漫画にもアンチは発生しますが、この作品に限って、「これは駄作だ」と断ずるひとはまずいないんじゃないかと思います。
映画化&アニメ化も決定し、今更説明は不要だと思いますが、一昨年のレビュー文章を再掲しておきます。
奇をてらったところもなく、嫌みなくエエ話で説教臭くなく人を前に進ませる力を持つ、最近めずらしい王道良作だと思います。
この賛辞を、二年経って知名度が上がった今でも変わらず捧げられるところがこの漫画のすごいところかなと。
ちなみにこのレビューで「来年(2010年)映像化されるに1000円賭ける」と書いたのですが、映画公開は今年(2012年)なのでこの賭け金を誰に支払えばいいのかわかりません。
少女ファイト/日本橋 ヨヲコ
少女ファイト(8) (イブニングKCDX) 日本橋 ヨヲコ 講談社 2011-07-22 |
スポーツ漫画度 ★★★☆☆
5,6年前からレイヤーの方々の間で「少女ファイト」が盛り上がっていたので、気にはなっていたのですが、大学生の頃ヤンマガで毎週読んでた「極東学園天国」の作者が日本橋ヨヲコだと気づいたのは実はここ3年くらいの話です。
それで、日本橋ヨヲコ推しの会社の先輩に「G戦場ヘヴンズドア」を借りて読んだのが2010年。その後自分で「少女ファイト」をそろえました。が、2010年はレビューお休みしたので…
psiが好きだった「極東学園天国」は学園バトル、「G戦場ヘヴンズドア」は漫画家、「少女ファイト」はバレーボールと題材は変わっていますが、中身は共通していて、人間の関係性と内面描写です。
なので、「少女ファイト」はスポ根ものとして読むと微妙かもしれません。スポーツの能力の優劣にメンタルが重要でそこを重視して描いているという点では「おお振り」なんかと近いですが、あれよりももっと場外乱闘的な描写が多いので、スポーツ漫画色はほとんど感じません。
8巻はサラの父親が監督を務める朱雀戦を前にして、サラの代理復讐に燃えるキャプテンとサラの間にすれちがいが生じたり、ひきこもりの小田切弟を学校に行かせたら男としてみてやると延友に言われた広之が頑張る話など。
psi的8巻ハイライトは財閥ボンボンの広之がひきこもりを引っ張り出すというので、式島が「お前みたく恵まれた裕福なボンボンが何言っても説得力ねーぞー」というのに対して、広之が「生まれてから死ぬまで百万回は聞きそうな定型文ですね」とさらりと流すところ。
広之は自分の言葉をまともに聞いてもらえないというハンデを抱え、金銭で解決可能なすべてのものに対する言い訳を許されないというハードモード人生を歩いている。もちろん、財閥ボンボンでない人間にはそれ以外の部分でハードな人生なのだろう。広之はすでに百万回「お前が言っても説得力がない」と言われる/思われることを覚悟して、それでもその人の耳に届くように言葉を選び、行動を起こすのだ。
おおきく振りかぶって/ひぐち アサ
おおきく振りかぶって(18) (アフタヌーンKC) ひぐち アサ 講談社 2011-11-22 |
どうやって終わらせるのか心配度 ★★★★★
夏体が終わった西浦が合宿に励む裏で、武蔵野の進撃の大フィーチャー。というか榛名さん大フィーチャー。
最初の頃、阿部視点でかなりのDQNに描かれていた榛名さんですが、どんどんカッコ良くなっています。そもそも、おお振りの元となった読みきりは武蔵野の話だったので、榛名さんフィーチャーは当たり前かもしれませんが。アニメ第三期やってくれたら松風番長オンステージになるかと思うと鼻血が出そうです。でも欲を言えば田島君の活躍が見たいです。。。。
しかしですね。このペースで各校の事情を丁寧に描いていたら、夏体いつになったら終わるんだって話になるわけで。
主人公はあくまで三橋であり、西浦なので、西浦が甲子園行かないと終われないわけです。
今年の夏はもう無理だし、春ってのもイマイチ…どうせなら夏で甲子園で終わりにしたいじゃないですか。しかも、やっぱり新設校でオール一年生で甲子園てのもイマイチリアリティがない。
そうすると、高二の夏までこの調子で進めるには最低10年以上かかる計算になります…!! 作者がどうとかじゃなくて、多分、普通に飽きます…
刻刻/堀尾 省太
刻刻(1) (モーニングKC) 堀尾 省太 講談社 2009-08-21 |
寄生獣ファンにオススメ度 ★★★★★
モー2に持ち込まれた謎の新人の作品として一昨年話題になっていた作品。これも去年レビューし損ねたので。
基本的に、「寄生獣ファンにオススメ」で殆ど言い表しているんだけど、強いて違いをあげるとすれば、独特のユーモア感かな。
作品のキーアイテムとなる石を、金庫にしまうでもなく「国技館」とかダサい字彫ってテレビの上に置いておくところとか、じいちゃんの瞬間移動が絶妙にヘボいとか、主人公の女がずっと前掛けと突っ掛けの「THE・主婦」スタイルとか。
ただ、4巻あたりではその辺のユーモアが減退している上、謎関係も一通りやっつけちゃったので、今後どうやって風呂敷をたたむつもりなのかが若干心配でもあり期待するところでもあり。
軍靴のバルツァー/中島 三千恒
軍靴のバルツァー 1 (BUNCH COMICS) 中島 三千恒 新潮社 2011-07-08 |
twitter上でオススメしているひとが何人かいたので買ってみました。
我ながら「戦場のヴァルキュリア+皇国の守護者」ってのが言いえてるんじゃないかなと思っています。
近代ヨーロッパっぽい軍備とかデザイン、キャラクターのライト感とかは戦ヴァル、「政治および軍事情勢に振り回されながらも手持ちのカードで孤軍奮闘する有能な中間管理職」的な主人公のポジションは皇国の守護者。
士官学校が舞台ということで、ジュブナイル的な要素も今後の展開によっては楽しめるかも知れません。期待。
玲瓏館健在なりや/冨 明仁
玲瓏館健在なりや 1巻 (ビームコミックス) 冨明仁 エンターブレイン 2010-07-15 |
めぞん一刻のファンにオススメ度 ★★★★☆
第何次か忘れたけど、パブリックスクールマイブームがやってきまして、パブリックスクール萌えの本質はなにかと色々考え、その重要な要素のひとつに閉鎖的な寄宿舎生活があると考えたわけです。
実際のパブリックスクールは全寮制の学校は数えるくらいしかないんですが、通いの生徒がいると萌え度は落ちるなーと。
その中で社会が形成され、政治が行われる。
ハリー・ポッターの萌えポイントは、どう見ても成績優秀品行方正キャラじゃないロンが、いつの間にか監督生になってるところなわけですよ。もともとウィーズリー家の伝統が貧乏だけど勉強が出来てグリフィンドールの監督生になる、っていうものだったわけですが、ロンもちゃんとそこはキッチリおさえているわけです。映画版では華麗にスルーされていて、まったくこの監督は萌えポイントをわかってないなと思いましたけれども。
プリフェクト(監督生)って言葉の響きだけで白米おかわりできるよね!
完全に話が脱線しましたが、そういう流れで、学生寮ものにも萌えがあるのではないかと期待して本作に手を伸ばしたわけです。
しかも、寄宿舎の場合は卒業したら出て行くという期限があるところが重要なポイントだったりするわけですが、この玲瓏館も取り壊しが決定しているという期限があるという。
そういう中での閉鎖性やデカダンスを大いに期待していたわけですが……
そんな期待は完全に裏切られました。上記のような期待を抱いている方には全くオススメしません。
しかし、管理人さんはファビュラスマックスだし、下宿人の方々もそれぞれ個性豊かで素敵です。そう、つまり「めぞん一刻」ですな。
期待とは別の意味でよい作品でした。
※ちなみに、「冨」が苗字でいいんだよね…?
Dの魔王/柳 広司 霜月 かよ子
Dの魔王 1 (ビッグコミックス) 柳 広司 霜月 かよ子 小学館 2009-08-28 |
諜報機関萌え ★★★★☆
旧日本陸軍に設立された秘密諜報機関「D機関」を舞台にスパイたちの活躍を描く…というスパイもの属性のpsiには伸びる触手を止められませんでした。
ジョーカー・ゲームという小説のコミカライズで、小説原作だけあって話はまとまってます。一話完結で毎回潜入する舞台も主人公も変わります。
残念ながらマンガは3巻でおしまいなのですが、もう少し結城中佐の魔王らしいところを見てみたいし、各主人公を継続して追っかけることでこの作品が提示したスパイ像に説得力を持たせられると思うので、原作のほうも読んでみたいです。
(その前に皇国の守護者の原作を読めって話なんですが…)
百鬼夜行抄/今 市子
眠れぬ夜の奇妙な話コミックス 百鬼夜行抄20 (ソノラマコミックス) 今 市子 朝日新聞出版 2011-07-07 |
マンネリ度 ★★★★☆
青嵐との決別によりストーリーに大幅な動きがあるかと思いきや、ほとんどそのことに言及のない話も多く、「展開遅すぎだろ!」という感じ。開もどこいってるのか良くわからないし、司ちゃんと律はくっつくのかくっつかないのかハッキリしてほしいし、あーもう!
と、まあ、焦らされてイライラするのは好きだからでして。ただでさえ年に1巻出るかという刊行ペースなので、水戸黄門展開を続けられると話が完結する前に今先生が死んじゃったりしないか心配です。
死んじゃうは言いすぎにしても、女性漫画家は加齢で筆圧が下がって絵がガラッと変わったりするので、早いとこ区切りつけてほしい感はあります。
陰陽師 玉手匣/岡野 玲子
陰陽師 玉手匣 1 (ジェッツコミックス) 岡野玲子 夢枕獏 白泉社 2011-12-28 |
おかえり度 ★★★★★
当初は夢枕獏の原作に忠実に、それでいて岡野玲子独特のユーモアがちりばめられていた感じだったのが、途中から岡野玲子が(いい意味で)暴走し、壮大な展開の末、夢枕獏の原作からは遠く離れた彼岸に着地した「陰陽師」は、そのあまりの素晴らしい完結に(完全にはついていけてなかったですが)もう続編とか外伝とかはないだろうと思っていたのがまさかの復活。
キーボードヤギと、「ひろまさぁ~~~ぶおうえうえうえうえ~~~」とかいいながら玄象の絵描いて盛り上がってた高校時代から15年経ったわけで、またこの世界が拝めるとはありがたやです。
しかも、「陰陽師」終盤、晴明は竜質になっちゃって、いつもの人をくったような洒脱味がなくなったり、真葛様も「THE☆母性」みたいになっちゃって、あの男の子みたいにヤンチャだった真葛様はどこへ…と悲しくなっていたので、本作では若干もとのオチャメな二人に戻っていて嬉しいです。ひろまさも出てきたし。ひろまさかわいいよひろまさ。怪我がないのにがまの油が必要な顔とか言われてるよ。失礼だよ!
ちなみに、若子様はいいキャラなんだけど、晴明の幼少時と全然顔違うんだが…真葛様似なんだろうか。それにしたってもう少しシュッとしたお顔でもよいのでは。
回転木馬/大矢 ちき
回転木馬 (復刻漫画名作シリーズ) 大矢ちき 小学館 2011-03-03 |
古きよき少女マンガ度 ★★★★★
70年代少女マンガの重要人物として名前は聞いていたものの、作品は初めて読む大矢ちき先生の作品。
初掲載は75年なのですが、当時のカラーを復刻したということで非常に美しい作品です。
絵のタッチはいわゆる昔の少女マンガ(池田理代子とか)に通底する部分もありつつ、無駄のないシャープな筆致は古臭い感じを与えません。
回転木馬+少女の静かな狂気というと、どうしてもpsi的少女マンガ最高峰のひとつ、「アリスにお願い / 岩館真理子」を思い出してしまいますね…
→ 2011 comic review 3 of 5 に続く
1月 15th, 2012 at 8:26 AM
review2はメジャーどころ押さえてきましたね!
ああ、各レビューごとにコメント書いてすみません。
自分と違う感性でおもしろいと言われる作品をチラ見するのって楽しくて。
「宇宙兄弟」は~安定感ありますね。
最初に小栗君のアフロみたときはふきましたが、最近馴染んできました。
実写映画も楽しみになってきました。
私は「玲瓏館健在なりや」が気になります。
1月 21st, 2012 at 4:20 PM
> ああ、各レビューごとにコメント書いてすみません。
とんでもないです! ありがとうございます!
>「玲瓏館健在なりや」
fellows!系がお好きなれんぎょうさんであれば、玲瓏館に暮らすダイナマイトボディお姉さんたちはお気に召すかと思います!