過去のコミックレビュー
Under the Rose 春の賛歌/船戸 明里
Under the Rose 7 春の賛歌 (バーズコミックス デラックス) 船戸 明里 幻冬舎 2011-09-26 |
万人にオススメする度 ★★★★☆
作者と友達になりたい度 ★★☆☆☆
2009年のレビューで6巻を取り上げたのに、今現在の最新刊が7巻という…
アンナからの解雇命令を受けて、スタンリー一家はアーサーに黙ってロウランドから出て行こうとする。偶然スタンリーを訪問したアーサーはスタンリー一家の出奔に気づき、そのまま後を追っていってしまう。
一方アーサーが出て行ったことに気づいたアンナの精神状態は極限に達し、唯一の味方であるウィリアムすら突き放し、これまで興味を示さなかったロウランドの館の経営に干渉を始め、使用人は大量解雇と手のつけられない状態に。
アーサーが帰ってこないかもしれないと感じるウィリアムは、アーサーの捜索を進めると同時に、執事+女中頭+家庭教師ブレナンたちと協力してアーサーなしでやっていく方法を模索する…
7巻にはなにも好転する状況がなく、何も解決せず、すべてが悪化する一方なので、正直読むのがつらい巻になっています。
しかもはにろを読んでいると最終的な結末もわかっているわけでして…
ずっと超然としていたウィリアム君が弱味を見せるシーンが多いので、強いて言うならそこが萌えポイントかもしれませんね。
次巻ではアルバートやライナス君が帰省してきて何かしら状況が動くのではないかと思われますので、辛抱強く待ちたいと思います。
この作者は、「天才なのに努力も人の百倍くらいする」最強タイプで、であるがゆえに自分にも他人にも厳しいタイプと思われます。作者と友達になりたい度が★二つなのは、そういうわけです。でも作品は凄いです。暗い話は問答無用で受け付けないの!という人以外は読んで損はないです。とくに「冬の物語」は若干救いもあるので、オススメです。
Landreaall/おがきちか
Landreaall 19 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス) おがき ちか 一迅社 2011-12-24 |
万人にオススメする度 ★★★☆☆
作者に惚れる度 ★★★★★
2009年のレビュー時には、「おお、これはいいじゃん」くらいだったのが、だんだん深みに嵌って限定版と通常版両方買ってみたり、サイン会の整理券をもらいにクリスマスイブの渋谷に繰り出してみたり(結局GETできず)、おかしなことになっております。
だいたい、漫画家のサイン会なんて行きたいと思ったことないもんね。
おがき先生のサインが欲しいのか? 否であります。
まあ、そのうち値打ちが出るかもしれないけど。
サイン会限定の特典が欲しいのか? まあ、若干それはあります。
しかしやっぱり、サイン会に人が集まることで、書店も出版社も「おがき先生の本を売っていこう!」っていう気になります。そうすると、おがき先生のお財布が潤うだけでなく、地方のファンの人とかも作品が手に入りやすくなったりするかもしれません。
気に入った作品の作者をいちいちそんなことまで考えて支援していたらどれだけ時間とお金があっても足りないわけですが、おがき先生にはそれをやってみようと思わせる魅力があります。
じゃあその魅力って何? と問われると文章で説明するのは非常に難しいのですが、乱暴にまとめてしまえば、「ダイバーシティの許容」ということかなと。
「ダイバーシティの許容」ってのは、単純に「そういう考えの人もいるよね」って言えばいいものではありません。
たとえば、職場の同じチームにハンディキャップのある人が配属されてきたとして、その人を差別しないことがダイバーシティではなく、その人の職場内でのさまざまなシーンで必要となる手助けを行うことまでも含めて、すなわち、語弊を恐れずに言えば、自分でそのひとのためにさまざまな形のコストを支払うことを含めてはじめてダイバーシティといえるわけです。
たとえば、ライナスはなんだかんだでDXに協力するんだけど、あくまで「契約書にDXのサインをもらうためのステップ」だから、という体を崩しません。それに対してルーディーが「ライナスはDXと一生そうやって面倒くさい友情を築いていけばいいよ」というのです。
「DXの力になりたいから、って素直に言えばいいのに」というようなサジェスチョンでもなく、「ライナスはツンデレだなぁw」みたいな突き放した現状肯定でもなく、前述の台詞。ルーディーは、ライナスのアイデンティティの根幹である商売とか契約とか明文化された関係性を肯定し、その上でさらにDXとの「面倒くさい」友情を成立させるために手を貸すと含意しているのです。ライナスの価値観を守るためにルーディーはコストを支払う覚悟があると言っているのです。
そういう慈愛? みたいなものが行間から立ち昇ってきて、作者の懐の広さを感じさせるのが、作品のみならず、作者をも愛してしまう理由かもしれません。
侍ばんぱいや/おがきちか
侍ばんぱいや (F×COMICS) (F COMICS) おがきちか 太田出版 2011-05-19 |
あふーん度 ★★★★☆
竜葵様…?度 ★★★★☆
おがき先生がエロティクスfで連載されていたお江戸ヴァンパイア漫画。というか、なんの必然性もなくあちこちでヤりまくるためにヴァンパイアという設定が使われているだけで、いわゆるヴァンパイア漫画にお決まりの展開・テーマ(永遠の生の孤独とか)とは無縁です。
まあとにかくヤりまくるという点においては、「チカマニアックス」とかを想定していただくのがよろしいかと。
とはいえ、そこはかとなくランドリの竜葵様を彷彿とさせる冬馬の天然ズッコケぶりを見ていると、竜葵様がだんだんボケキャラになってきたのはアンちゃんだけのせいではないのではないかという気がしてくるし、朔太の「お江戸八百屋町ちょっとくれーもののけがまじってたってかまやしないよ!」というあっけらかんとした器のデカさを見ると、やっぱりおがき先生だなーと思います。
単純にランドリのキャラ萌えの人は読む必要全くないですが、そういうおがき先生の価値観とか好きな人は読んだらいいと思います。
絵も、ランドリと書き分けて太い線で描かれていて、おしゃれ系というか、サブカル系っぽいっていうか、太田出版ぽい感じになっています。
岡崎京子未刊作品集 森/岡崎京子
岡崎京子未刊作品集 森 (フィールコミックス) (Feelコミックス) 岡崎 京子 祥伝社 2011-09-14 |
あらかじめ断っておきたいのですが、岡崎京子先生の関係者や熱烈なファンの方は以下を読まないでください。
私にとって、岡崎京子は1996年に死んだ漫画家だ。
彼女が事故にあって半死半生というニュースを見たとき、とても悲しかったし、早く良くなってほしいと思った。
けれども、その容体が1,2ヶ月で執筆再開できるレベルではないと知ったと同時に、『ああ、もう漫画家「岡崎京子」は死んだんだな』と覚悟しようと思った。
岡きょんという漫画家は、僕たち/アタシたちの漫画家だった。「僕たち/アタシたち」を誰よりもちゃんと描いてくれる漫画家という一点で信頼されていた…というか、信仰されていた漫画家だった。
簡単に、そして乱暴に言ってしまうなら「同時代性」と言ってもいい。
アムラーの流行もヤマンバギャルも森君のSMAP脱退もO157事件も山一の破綻も、地下鉄サリン事件や阪神淡路大震災のその後の経過もその目で見ることがなく、私たちと共有していない人物はもはや「僕たち/アタシたち」ではない。それは絶対にあとから取り戻せる類のものではない。
もし、驚異的な回復を見せて元通りの絵で元通りの品質の漫画を描いたとしても、同じ時間を共有しなかった人物の言葉は、絵は、私たちには届かないだろう。
他のどの漫画家であっても、そうは思わなかっただろうが、岡崎京子だけは、その一点において、もう、私たちが信仰した岡崎京子ではなくなってしまったし、「それ」に戻ることもない。
そういう意味で、「森」という未完成原稿は、岡崎京子とともに歩むことを放棄した「僕たち/アタシたち」の、放置された1996年の隙間を補完する、それ以上でもそれ以下でもないものと言える。
えー、当時のことを書くと文体がロッキング・オン風になるのは体に染み付いた癖なので勘弁してください。
ぼくらの☆ひかりクラブ 上[小学生篇]/古屋 兎丸
ぼくらの☆ひかりクラブ 上[小学生篇] 古屋兎丸 太田出版 2011-11-29 |
兎丸先生度 ★★★★★
ライチ ラライチ ララライチ!(挨拶)
「ライチ光クラブ」の前日譚ということで、ゼラが光クラブを掌握するまで。
psi的キャッチフレーズは「こんなに可愛い中二病患者みたことない!」です。
しかしやっぱりどう見てもタミヤが主人公の器なので、「ライチ光クラブ」の結末は妥当とは思いつつもじゃあ何でそもそもゼラにのっとられたんだ的な。
なるほど…みんなジャイボの色香にまどわされていたのか…(違います)
幻覚ピカソ/古屋 兎丸
幻覚ピカソ 1 (ジャンプコミックス) 古屋 兎丸 集英社 2009-02-04 |
グロくない度 ★★★☆☆
絵を描くのが好き過ぎて絶賛ぼっち満喫中の主人公が絵を通じて同級生たちの心を救い、絆を築いていくハートフル青春学園もの…と聞くととても兎丸先生の作品とは思えないと思いますが、設定があんまりハートフルではない「帝一の國」と比較しても実はこちらのほうが兎丸先生らしいです。
というのは、その同級生たちの心象風景を主人公がスケッチするんですが、その絵がイチイチグロいので。
で、兎丸先生らしいグロさを満喫しながらも、最後は泣ける締めですばらしい作品でした。このまとめ方はジャンプの功績かもしれません。
帝一の國/古屋 兎丸
帝一の國 1 (ジャンプコミックス) 古屋 兎丸 集英社 2011-03-04 |
グロくない度 ★★★★★
士官学校萌え ★★★☆☆
兎丸先生なのに1ミリもグロくない! と各所で驚愕のあまり心臓発作を起こしたとか起こしてないとか根も葉もない都市伝説が世間を席巻(わかる人は笑いましょう)している本作でございます。
日本のハイエンドの中等教育が国の政治的軍事的中枢を担う人物を育成することを目的にしていた古きよき時代の男子高校の学内政治バトルということで、期待に胸を膨らませて読んだわけですが、良くも悪くも兎丸先生であり、ジャンプ漫画だなという感じで、エリート男子校萌えは間違ってないですが、主体は帝一案外ヘタレ萌えと氷室ローランド先輩意外と漢じゃん萌えの漫画なのかなと。大鷹はどうみてもタミヤです本当に以下略という感じで、結末が心配です。光明は兎丸先生らしくてとても安心するキャラですね。
秘密 -トップ・シークレット-/清水 玲子
秘密 -トップ・シークレット- 10 (ジェッツコミックス) 清水玲子 白泉社 2011-12-28 |
クオリティ高すぎて吐き気がする度 ★★★★★
9巻で急転直下、鈴木の姉一家が…ッ! となったあと、10巻でどこにもいけず、どん底をさまよってどん詰まっている印象。
これまた読んでてつらい巻となっております。
11巻に期待。
→ 2011 comic review 2 of 5 に続く
1月 15th, 2012 at 8:16 AM
review1だけ見ると・・・
読んだことがあるのは「秘密」だけ!
さすがでございます。
最近は乱読する時間も余裕もないのですが、
どれも読んでみたい気がします!
1月 21st, 2012 at 4:16 PM
あけましておめでとうございます!
「秘密」は入れる場所間違えたかもしれないです…(笑)
そうですね……これまでお伺いした話などを加味するに、れんぎょうさんにはこのページでは”under the rose”か”幻覚ピカソ”がオススメです!