原作を読んだのが5億年前なので記憶が薄れているというのを差し引いても、レゼ編なんてあったっけ? というくらい、個人的には原作読んだ時の印象が薄いエピソードなんだけど、わざわざ劇場作品にするということは人気が高い(もしくは他のパートが絵面も精神的にもグロ過ぎて使えない)ということなんだろうと思う。
確かに、出会いから別れまで話としてまとまってて尺的にもちょうどいいし(これは原作を再編した結果かもしれない)、全体としてはウェルメイドな佳作だと感じた。
本作、監督交代がわりとポジティブに語られてるので、TV版別に全然違和感なかった民としてはすごいテイスト変わってたら嫌だなぁと思いながら観たけど(TV版監督の中山竜は監督としてはあまりよく知らないが原画マンとしてはとても好きで、アクションがいいなと思うアニメは大体彼が原画や動画でクレジットされている)、日常パートは確かに作画や演出にTV版と若干のテイストの違いを感じたものの、作中のかなりの部分を占める戦闘作画についてはやっぱ結局こっち方面なんだという、もう完全に時代はこっちで定着したんだなという妙な納得感があった。
「こっち」ってなにさ。
ここから「ケレン味→ウェルメイド→ケレン味」という、IT業界における「集約→分散→集約」みたいな話をします。
アニメーションがセルに手描きだった頃においては、アニメーションの原画やセル画として正しい絵というのは、必ずしも整ったデッサン、一枚絵として美しい形とは一致していないのが普通で、演出意図(躍動感とか、スピード感とか)に沿った表現の魅力的な絵のことを「絵に芝居をさせる」と言ったりして、そういう絵が描ける人が神アニメーターとか呼ばれてきた。
ただ、この「ケレン味」のある作画で「絵に芝居」をさせるのって、「ケレン味」そのものが素晴らしいからというのもあるけど、限られたセル枚数と労力でどれだけ効果的に演出するかという話でもあるので、アニメーション制作工程のデジタル化が進むにつれ、力技でクオリティを爆上げしていくみたいな方向に進んでいく。
カラコレ何度でもやり直せるので大規模予算のアニメーション映画とかじゃない普通のTVアニメでも色彩設計が格段に良くなったし、3Dモデル活用して作画コストを下げたり、効果もアセット化して効率化することで原画や中割りの平均クオリティが上がっていった。一方で国外(中国・アジア)に制作外注することでトンデモ作画の作品とかも大量に生まれたけど、そういう混沌の時代を経て今は国内のスタジオと遜色ない国外の制作会社も多数ある。
時期的には00年代後半とか10年代前半あたりが「デジタル制作が定着してきた時期」だと思っている。
例えば、2010年の「ハートキャッチプリキュア」なんかは主題歌に合わせて3DCGのプリキュアが踊るのだが(キャラが踊るOPEDブームの先駆けと言われている)、普段アニメを見ない人ならあれが3DCGだとはわからないレベルに仕上がっている。本編も、馬越嘉彦の超デザイン超作画が崩れることなくぬるぬる動いて(「ぬるぬる動く」という表現がアニメファンのクリシェとなったのもこの頃)、アクション演出も「ニチアサヒロインがこんなリアルすぎるパンチや蹴りの重さの肉弾戦していいのか」というエポックメイキングだった。
公式でOPEDだけ切り取ってるのなかったので第一話のEDから
https://youtu.be/MAGH6UADPM0?si=Goe_A2wOy2QtFuvX&t=1399
ちなみに自分はキュアマリンが一番好きなんだけど、女児のいるご家庭の会社の人から「psiさんはキュアサンシャインだよね」って当時言われた。多分変身前のいつきが男装して通学してるからな気がする。↓はキュアサンシャインの変身バンクなんだけど終盤のパンチとキックの殺傷能力が高すぎてニチアサヒロインとは……てなる
https://www.youtube.com/watch?v=LhFVFJnHPDQ
(ちょうどレゼ篇を鑑賞して本件のことを考えていた翌日にハトプリシリーズディレクター長峯達也氏逝去の報に出会した。タイムリーすぎる)
ロボット作画(手で描くと労力がすごい)を3DCGにする試みもこの時期多くの作品で行われたが、まだ玉石混合で「明らかにCG〜」みたいなのもたくさんあった。
(アニメを見ない人には3DCGをアニメってピンとこないと思うのだが、極端にいうと、FFとかのゲームキャラが動いて喋っているのをそのまま所謂「アニメ」ですって言ったら違和感あるよね? それをもうちょっとイラストっぽく加工して……を極めたとして、それでもまだ違和感があるという話)
CG活用の終着点は「シドニアの騎士」とか「神撃のバハムート(GENESIS)(VIRGIN SOUL)」とかあの辺りではないかと思う(2014年)。キャラクターにも3DCGを適用した例として有名だが、確かに明らかに手描きと見分けはつくし、手描きと比較してどうこうと言い出せば手描きに軍配は上がるだろうけど、CGでここまで「芝居」ができるという意味でこの辺がいい意味での限界なんじゃないかという気がしている。
じゃあその上に行くにはどうしたらいいか。
「CGを活用しつつ、それを上回る物量と画力で圧倒する」
これをやったのがUfotable。
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