2007年まとめ 【小説編】
木曜日, 01. 3. 2008 – Category: Review
1. 氷と炎の歌/ジョージ・R・R・マーティン
七王国の玉座〈1〉―氷と炎の歌〈1〉 (ハヤカワ文庫SF) ジョージ・R.R. マーティン George R.R. Martin 岡部 宏之 早川書房 2006-05 |
SFの巨匠による正統派ハイ・ファンタジー、不幸のスターク家一代記。副題:おかあちゃん、がんばる!
…というのは置いておいて。
ブランたん可愛いよブランたん!
最初「最近のpsiのショタ趣味を突こうとしても無駄だ愚か者マーちん!」と思っていたのですが、一巻からいきなり不幸に見舞われ、「ぐおー、ブランたん殺すなんて!」とキングスレイヤーに怒り狂っている自分に気づいてからは素直にブラン派の軍門に下りました。「最初にこんだけひどい目に逢っていれば今後は生き延びられそうだ」という予想だったのですが最近はもう不幸が一巡してまたブランたんに巡ってきそうなのでひやひやしています。早く最強の森の人になってくだちい。
2. 夜愁/サラ・ウォーターズ
夜愁 上 (1) (創元推理文庫 M ウ 14-4) サラ・ウォーターズ 中村 有希 東京創元社 2007-05 |
色々な書評で書かれていますが、「半身」「荊の城」のミステリを求めている方は読まない方がいいです。つーか、創元から出ている事自体不思議なくらいだ。ミステリと思って読むな。ただ、感動したとだけ言っておきます。
サラ・ウォーターズが好きな方というのはあの、近代イギリスの伝染病と暗くて湿気た空気、暗闇の中手を探りあうようなエロティシズムと聖性の混じり合う世界でのみ成立する心理劇にひかれていると思います。
確かに、いくらノン気でもこれは引っかかるかもと思わせる巧みな心理術で標的の百合な感情を引き出して操る術は見事なのですが、本当に全然イチミリも百合の素養がない標的だったら? という前提に立ってみると(実際はそういう人をわざわざ探して狙ってるんだろうけど)ミステリとしては成立しない部分もあるわけです。降霊会とかが普通に信じられてた時代じゃないととかまあいろいろ他にもあるわけで。
なので、この作品では思い切ってミステリの部分はバッサリと捨てました。
筆者のこれまで見せてきた、湿った牢獄に差し込む目の眩む様な光や隣の部屋を静かに歩く少女の衣ずれの音、そっと重ねた手の体温、そういったものをありありと描き出す描写力が存分に堪能できる作品です。
そして、前の二作でははじめから終りまで伝染病と厚い雲で覆われていた情景が、この作品では時折太陽のもとにさらされる。平日の昼のハイドパーク、緑の芝生の上でほおばるサンドイッチ、スカートの下に敷いたハンカチーフ。まるで、二十年経って思い出す、美しい部分だけが残った思い出のように鮮やかにその情景が立ち現れる様に鳥肌が立つ。
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