肩胛骨は翼のなごり

日曜日, 06. 18. 2006  –  Category: Review

肩胛骨は翼のなごり 肩胛骨は翼のなごり
デイヴィッド アーモンド David Almond 山田 順子

東京創元社 2000-09
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一昔前のヲタク女子中学生のロマンチシズムをパンパンに詰め込んだようなタイトルに惹かれて購入。
表紙の球体関節人形も目のデカさが不自然でキモくて良い。
話の筋は3行でかけてしまうような単純なもの。
主人公が引っ越し先の家の納屋の奥に今にも死にそうな子汚いオッサンを発見し、残り物などを与えて飼いならす。オッサンはボロボロの背広を着て、蝿の死骸と蜘蛛の巣まみれだが、背中には折りたたまれた翼が隠されている。主人公と徐々に打ち解けたオッサンは、病気で手術をすることになった主人公の妹の元に現れて妹の命を救う。
まあ、学校の友達との友情とか隣の家の女の子との秘密の共有とかこの手の話にお決まりの色々はありつつ、もう本当に王道なので筋とか書くことが無くて困る。
ストーリー自体は目新しくも無ければ起伏もあまりない単純なものだけれども、それぞれの場面が丁寧に書かれているので安っぽい感じはしない。翼を持った男が美形でもなんでもなくやっぱり最後までフクロウが運んできたネズミとか丸呑みしてる汚いオッサン(本当はオッサンではなくて若かったのだけれども)であるのもヲタク女子中学生の妄想を差し込ませる隙を与えない。言うなれば、児童文学にあるまじきリアルさ。
例えば、
母親が引越しと赤ん坊の病気とで心労のあまり主人公にヒステリーを起こした後、「何もかもがぐちゃぐちゃだから、気持ちまでぐちゃぐちゃになっちゃって‥‥ごめんね、でも、わかるでしょ?」と謝る。
環境の変化と妹の容態は静かに主人公を蝕むが、それを表に出す術を知らない。父親はそれを汲み取って学校を休ませる。
隣の家の娘のミナは生き物が生きるための力というものを理解し、ウィリアム・ブレイクの詩を引用する。学校教育が抑圧するものから逃れる術を知っている大人びた少女だが、一方で学校に通っているだけで馬鹿扱いする視野の狭さ、狭量さもあり、実年齢ゆえの限界も感じさせる。
全ての登場人物は良い子(人)過ぎないものの、大枠「良い人」であり、まあ、実際存在する人の大半はこの辺りの良い人さ加減をウロウロしているのだろう。そういう意味で、これはファンタジーとは呼べない。
翼を持つ男も、ミナと主人公の妄想や願望の産物もしくは生命力のメタファーと読むこともできるため、幻想文学という定義も必ずしも当てはまらない。
それでも、読後の印象は「遠い」。
この話は果てしなく遠い。
結局その命を救ったとする、赤ん坊に対する愛情だけではない。
両親の主人公に対する愛情、学校の友達やミナとの友情、ミナの母親、学校の先生の愛情、ミナの観察する生き物達に対する愛情、そしてもちろん男(スケルグ)に対する愛情。
ページの上は愛情に埋め尽くされている。
そのような愛情をひとつでも感じたことがある人にとってはまた違うのかもしれないが、私にとってはただひたすら遠い。こんな世界、ただひたすらにファンタジーだ。

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3 Responses to “肩胛骨は翼のなごり”

  1. れんぎょう Says:

    おひさしぶりでございます。
    最近はすっかりmixiにはまり、楽して手抜き状態です。
    翼のはえたおっさんで、「ベルリン天使の詩」を思い出しました。

  2. psi Says:

    お久しぶりです。
    mixi登録したはいいですが、イマイチ楽しみ方が分からず相変わらず低空飛行です。
    そういえば12時の権力者コミュで姐さんを見かけたような…?
    「ベルリン 天使の詩」ありましたねー。
    あのオッサン羽生えてましたっけ? ああー表紙とかそうだったかもあんまり覚えてないです

  3. れんぎょう Says:

    おおお、mixiいるんだ!
    静乃んもいるけど、出現率激レアものです。
    12時の権力者コミュはいってますよ~w
    友達が作った12時のコミュもあったりします。

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