ベルリン、僕らの革命

日曜日, 05. 8. 2005  –  Category: Review

一昨日、「ベルリン、僕らの革命」を見てきました。
主演は「グッバイ! レーニン」(以前の感想?記事)のダニエル・ブリュール。ベルリン好きはとりあえずチェックしないとね。
以下かるーくあらすじ。


主人公のヤン(ダニエル)と親友のピーター(スタイプ・エルツェッグ)は「エデュケーターズ」という名前で、ブルジョアの留守宅に押し入って部屋を面白おかしく破壊し、「贅沢は敵だ!」「欲しがりません、勝つまでは」などと警告メッセージを残して去るという活動をしています(やや嘘)。いっぽうピーターの彼女のユールはとある金持ち(ヘルデンベルグ)と起こした自動車事故のために損害賠償の多大なる借金を抱え、家賃すら払えなくなってしまいます。
そんなこんなの関係でピーターだけが旅行に出かけ、その間にヤンとユールが意気投合し、ヤンはうっかり「エデュケーターズ」の活動をユールに暴露、ユールがノリノリで自分を借金苦に追いやったヘルデンベルグの家に押し入るのにつき合わされます。
これが原因でヘルデンベルグを連れて逃避行に出かけなければならなくなった三人は云々。
このヘルデンベルグというのが実は若い頃学生運動の幹部で、逃亡先で少しづつお互いの思想について議論を交わすようになるのですが‥‥てなかんじ。
ピーターというのは、グリーンウッド兄弟に真ん中がいたら絶対こんな顔!というぐらいの顔でして、観る前から妙に気になって仕方なかったのですが、これがスッゲーナイスバディ。彼の体に視線が釘付けになってる自分を発見したとき、自分が女だったんだなと気づきました。
冒頭で「借金を何とかしなきゃ」とヘコむユールは「なんとかなるよ、気晴らししないと」ととにかくユールを旅行に連れて行こうとするピーターに対して苛立つんですが、そこだけはユールに共感しました。
でもそれ以外はもうこの素晴らしくナイスガイな二人がユールに翻弄されっぱなしで、もうユールにあきれるやら二人がかわいそうやら。
最後の「そう、理想は全てに優先するのよ」みたいな台詞をユールが吐きやがったときには「ピピーッ、そこッ! お前が言うな! レッドカード退場!」みたいな気分でした。
感動したのは終盤、ピーターとヤンが抱き合うところですね。ああもうこいつらなんていい奴×2なんだ!
あと、いいタイミングでジェフ・バックリーの「ハレルヤ」が流れるのでジェフを偲んでしんみりしたり。
正直、若者三人の主張はニッポンの資本主義経済に浸りきってる自分にはピンと来なくて、誘拐されたオッサンの言い分の方が全然共感できました。多くの日本人の若者にとってもやっぱり三人の主張は青臭いだけに感じてしまうんじゃないかと思います。
日本の学生運動は幹部クラスになるとその経歴のせいでロクな就職もできず大概が予備校教師になっているという現実がありますが(あ、予備校教師がロクな職じゃないと言ってるわけではないですよ!)、ドイツはどうなんでしょうね。ヘルデンベルグみたいになってるのは割と一般的なんでしょうか。ドイツ赤軍の歴史もほとんど知らないのでなんとも。
そういう意味で万人にオススメできるというわけではないですが、そういう青臭さがイヤでなければ素晴らしい青春映画だと思います。
個人的にはplaceboが流れてニンマリしたり、ベルリンの見知った風景が登場して喜んだりと楽しみどころは満載でした。
※ネタバレ気味?
最後の「お前たちはずっと変わらない」の意味が良く分からなかったので誰か教えて下さい。「転んだ」ヘルデンベルグが三人に向けて希望を交えて残した、というのが私の希望なんですが、そうすると一体いつの間に書いたんだ?という話になるわけで。
ヘルデンベルグが「警察は心配ない」といいながら結局警察にタレ込んだというのはガチでいいんですよね?
で、あの部屋はユールの追い出された部屋‥‥ですよね、状況的に。
そうするとペンキ塗ってた時にヤンとユールが貼ったってのが自然だと思うんですが、するとメッセージの相手は大家なり、警察なり「体制側」なわけで、それに対して「お前たちはずっと変わらない」っていうのは余りにネガティブなんじゃぁ‥‥じゃあなんでお前たち「エデュケーターズ」やってんの?って話で。
でも、ヘルデンベルグが警察に言ったのは終わり方として私は凄く気に入っています。
ちょっと無理があるかもしれないけど妥協点としては、「若者に触発されたヘルデンブルグが若い頃を思い出して自分もちょっとテロっぽいことをしてみたくなり、ユールの部屋にメッセージを仕込み、ユールの部屋からは足が着かないと踏んだ上で警察に通報した」ですかねぇ?
結局、学生運動とかその手のモノって、半分くらいは対立する思想に対して「体制」とか「ブルジョア」とかそういう抽象的な概念とか、人々の集まりとしてしか見れていなくて、その「体制」を形成する個々人に対する理解と想像力が欠如しているがゆえに生じるものだという気がするんです。
そういうものがあってなお、「理想」を掲げることはそれは素晴らしいことだと思うんですけど、私たちの大半はそこまでの強靭な精神を維持できなくて、「体制」も、一人ひとりを見れば単純にそのひとの精一杯の人生があるだけで、その出発点は自分とそうは大きく変わらないんだってことを理解した瞬間に、何が正しくて、何が間違ってるのか、そしてその現実的な解決策とはなんなのかって考え出すと、なにも分からないし、なにも代替案を提示できないことに気づくのだと思います。
そこを強引に現実的な解決策に落とし込もうとすると、かなりの確率でそれはテロリズムと呼ばれるものになってしまうのだと思います。
じゃあ、私たちにできることは普遍的な正解を作ることではなく自分の人生を精一杯生きることだけなのかってことになってしまって、それはそれで悲しいとは思うんですけどね。
#ダニエル・ブリュールの次回作は夏公開の「ラベンダーの咲く庭で」。二人のばあちゃん姉妹がダニエルをめぐって若い女と戦います。ばあちゃんの出る映画は好きなので観たいです。その次は秋公開の「青い棘」。ギムナジウムが出てくるので観たいと思います。以下et caのPBBSに書いた文再掲。

「青い棘」はベルリンで実際に起きた事件を基にしたギムナジウム&デカダンス(‥‥ということは当然少年愛もあり!)映画だそうですよ。予告編では一瞬ブリュールと相手役のチューの姿が映っていたので期待大です(何)。
「モーリス」に続く、みたいなあおり文句でしたが一体現在何人の人が若き日のヒュー・グラントがそんなホモ映画に出ていたことを覚えているのでしょうか。
まあホモであれなんであれ、ギムナジウムという単語はそれだけでヲトメ心に火をつけるわけでして、「青い棘」見に行くの忘れちゃダメよの意味も込めて描かせて頂きました。

#あれ、もうひとつなんか書こうと思ったの忘れた‥‥思い出したら書きます。
→思い出した。
このエントリとは関係ないんですが、「グッバイ! レーニン」の感想としてリンクしたエントリで触れたシンクタンクからの冊子が実家に何冊も送られて来てて、なんだろうと思ったらあのときの取材の時に私が紹介した知り合いのベンチャーとそのシンクタンクが一緒に企画したイベントのレポートが載っていたのでした。
そのベンチャーはバイオテクノロジーを小学生とかに分かりやすく伝える教育ベンチャーで、実験教室とかをやってます。一方シンクタンクの方も「教育」というのがひとつの大きなテーマとして取り組んでいて、小学生向けの自然科学の体験教室みたいなのをやってるんですが、私も編プロでバイトしていた関係でそれを取材したことがあったので紹介しました。今回めでたくそのベンチャーとのコラボレーションが実現したようで、嬉しかったです。
私たちは子どもの時から昔の人なら大人でも知らなかったような科学的な常識をもって育っています。それと同じように、これからの子ども達は、DNAなどの生体分子に関する正しい知識を常識として知って育っていくようになるんだと思いますし、その必要があると思います。なにしろ、自分の体のことですから。
なので、こういう取り組みがもっと増えていくといいと思いますし、もちろん、そのベンチャーにも頑張って欲しいと思います。

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3 Responses to “ベルリン、僕らの革命”

  1. Pocket Warmer Says:

    映画: ベルリン、僕らの革命

    邦題:ベルリン、僕らの革命 原題:THE EDUKATORS 監督:ハンス・ワイ

  2. 牧羊犬の寄り道日記 Says:

    6月23日の匂い

    今日は「ベルリン、僕らの革命」(原題:THE EDUKATORS)を鑑賞。だが、ストーリーが悲しいくらい陳腐である。

  3. どうもこうもない日記 Says:

    ベルリン僕らの革命

    ベルリン僕らの革命
    を見ました。
    これはね、なかなか面白い映画でした。
    ただ単に青春グラフィティみたいなもんかと思ってたら
    そうじゃなかった。深い…

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