ネットワーク社会だね

火曜日, 09. 7. 2004  –  Category: Review

以前にも「戦闘妖精雪風」にハマってるって書いたと思うんですが、週末ついに「戦闘妖精・雪風解析マニュアル」を買ってしまいました。

戦闘妖精・雪風解析マニュアル 戦闘妖精・雪風解析マニュアル
早川書房編集部

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アニメスタッフのインタビューとかはわりとどうでもいいんですが、書き下ろしの短編が載っていてこれがすごい!
話としては、零がカウンセリングで自分の幼少時について語るという構成なんですが、原作でもアニメでも(漫画ではそれっぽい記述がありますが)あまり記述のなかった、零がフェアリーに送られた原因に関係ありそうな話が載っています。(註:フェアリーは犯罪を犯した人間がやって来る設定だが、零が具体的にどういう犯罪を犯したかは書かれていない。漫画版では強盗グループにドライバーとして参加していた様子が描かれている)
自分以外のものに、いや、自分そのものにすら興味のなさそうな零が一体どんな犯罪を犯すのか。
結構想像しにくい部分だったんですが、この短編はとてもしっくりする形の犯罪が定義されています。
それは、「パーソナル・コンピュータの所有」です。
舞台となっている世界では、全てのコンピュータはネットワークに接続された形でしか存在してはならず、この端末を通じて情報を受信することは義務であり、端末を持たないことは犯罪であり、しかしネットブートする所定のOSしか使用できず、記憶装置はおろか、CPUリソースさえも共有しなければ犯罪、という社会へと移り変わろうとしていました。
零はごく小さい頃の記憶にある「パーソナルなコンピュータ」が忘れられず、端末を自分のものにしておきたいと強く願います。自分のプロセスを処理しているときはネットワーク経由での割り込みを許可せず、自作したOSで立ち上がるような、そんな計算機を目指してハードウェアレベルからの改造を行いますが、それが当局の知るところとなり、小さな零は逮捕されてしまいます。
これがFAFに来た直接の理由かどうかは分かりませんが、この短編では零が「パーソナルなコンピュータ」がほしいと思った経緯がとてもリアルに描かれていて、深く共感させられました。
現在インフラ面でもソフト面でも(グリッドとか)どんどん零のいる世界に近づいていってると思うのですが、いつかはこのように「パソコン」を渇望する時が来るのでしょうか?
コンピュータにアレルギーある方は読まないほうがいいと思いますが、基本的な知識のある人は読んでみると非常に興味深いと思います。
現在私のPCはネットワークに接続「できない」状況で、パーソナル過ぎて困っているわけですが、インターネットなんて言葉すら知らなかった時代は、ゲームとお絵かきとワープロで小説を書くくらいしか楽しみ方がなかったにもかかわらず、「自分のPCが欲しい」と強く感じていました。基本的に父親のPC だったので勝手にソフトをインストールすることも出来ず、というか経済力的にソフトを買うことも出来ず、インターネットがないということは楽しいソフトがその辺にタダで転がってるということもなく、エラーがでてもなぜエラーなのか(当時メッセージは英語が普通だったこともあり)全く分からず対処できないのが不満で仕方ありませんでした。
それが今ではインターネットにさえ接続すれば、遊ぶ方法も、エラーの対処の仕方もなんでも自分で調べることができる。ブロードバンドが普通になった今ではその課金すら気にする必要がなくなっています。すばらしいことです。
でも、それが普通の状態から入った今の子供たちはもうコンピュータと言うものに対する認識自体が全然異なっているのだろうなと思います。現在はネットワークに接続することが「義務」とまではなっていませんが、そうなってもほとんど違和感を抱かないと思います。
この短編ではカウンセリングを行っている若い女性カウンセラーエディスはコンピューターが「パーソナル」だった時代を知らない世代として零と相対化して描かれています。あ、零がジジイってことじゃないですよ。「そんなに年はかわらないじゃない」と書いてありましたから。でも、コンピュータの進歩ってものすごく早くて、おばあちゃんとかが「昔はテレビなんてなくてね‥‥」というのと同様に、ほんの2、3年しか違わない人の間でも大きなバックグラウンドの違いが生じうる。それってどうなんだろう。人間てそういうのに対応できるように出来てるのかなぁとちょっと不思議に思ったりするわけです。

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