ハレルヤ

日曜日, 09. 26. 2004  –  Category: 日常

昨日は高校時代の友達の結婚式でした。
ごく内輪だけのこじんまりしたよい式でした。新郎が40代ということもあり、参列者もみな落ち着いた雰囲気でした。
美容院でメイクしていったんですが、美容師さんに「(マスカラをつけながら)今日泣く?」と聞かれ、「いやー、どうでしょう。こんなに仲の良い子の式は初めてなんで、わかりませんねぇ」とか言ってたんですが、危うく泣きそうになりました。


最近はカジュアルな形式の式が流行っていて、私もそういう肩肘張らないのがいいと思ってたんですが、結婚式の感動ポイントはむしろそういう形式とか格式とかにあるのではないかと昨日出席して感じました。
全てが手はずどおりに厳かに進められて行く感じ、新郎新婦のぎこちないながらも練習したんだろうなぁと思わせる所作、これでもかというくらい晴れがましい聖歌隊の歌声…
結婚なんて役所行って結婚届出せばできるのですが、敢えて「結婚を成し遂げる」感を出すために、こういった込み入った形式などが必要なのだろうなと思いました。見る側にとっても、「型どおりに、つつがなく」と一生懸命な当人たちの姿に一番感動したり。
結婚した友達はR子というのですがいつもどこか超然とした雰囲気のある子で、世の中の出来事のほとんどは「本質的じゃない」と思っているんじゃないかという空気を醸していました。
そんな感じは見た目にも表れていて、とても美人なんだけど、俗世間の尺度で測ってはいけないような類の美しさの気がしています。
彼女だけは、いつまでも「少女性」というか「女になりきらない危うさ」みたいなものを持ち続けるのではないかというそんな…まあ、半分は私の妄想だったり思い込みだったり希望だったりするわけですが。
聖歌隊(…といっても3人でしたが)の歌声を聴いていると、R子が高校時代、聖歌の歌唱指導の時間に涙を流したことを思い出します。
それはテストで一人づつ前に出て歌わされるという日のことだったのですが、それが嫌でしかたなく、なんでそんなことを強制されなくてはならないのかと怒り狂っている生徒も多い中、いつもは「反体制」側の私やR子は特に反発もせず、壇上に上りました。ただ、R子が私と違ったのは、テスト中、途中まで歌うと突如ボロボロと涙を流し始めたことでした。
R子が普段から歌うことに対して苦手意識をもっていたのは彼女を少しでも知る人なら知っていたことですが、私は今回はそれとは全く関係がないとすぐに気づいたし、テストをしていた先生も、他の歌うのが嫌で泣き始めた生徒や意地でも歌おうとしない生徒には厳しい言葉を投げつけ、無理やりにでも歌わせていたのですが、R子に対してはじっと彼女の涙が止まるのを待っていました。それを見て、私はこの先生にそれまであまりいい印象をもっていませんでしたが、ああ、この人は分かっているんだと、やっぱり芸術家として、優れた人なのだと考えを改めました。
ところがテストが終了し、教室へ帰るとき、事件は起きました。R子に対して、「(泣いたことに対して)大丈夫?」と声をかけたクラスメイトがいたのです。
私は「うわっ、言っちゃったよこの子」と思いました。ひどく気分が悪くなって、多分R子も同じ気分だろうなと思いました。案の定、R子の顔色はどんどん悪くなって、「保健室寄るからご飯先食べてて」と言い出しました。すると別の子が「平気? ついていこうか?」というので私は慌てて「いやいやいや、一人で平気…だと思うよ?」と止めなければなりませんでした。
昼休みの間に話は「歌が苦手な生徒を泣くまで歌わせて挙句に保健室送りにした極悪教師」みたいな方向に広がって行き、私はもうムカつくのも通り越してなんだかなぁ〜とボーッとしてました。
その日の帰りにR子から手紙を受け取りました。内容はまず保健室の付き添いを断ったり、R子の帰りを待って弁当を食べようという人々を説得して先に食事を済ませたことへのお礼でした。それから、「psiは多分よくわかってることだろうからこんなことpsiに言っても仕方ないだろうけど」と前置きした上で、「あれ(テスト中泣いたこと)は歌うために必要なことだったんだよ。歌うには開かないといけないから…開くと必然的に涙腺も緩むわけで…先生もそれは分かってくれていたし、私的にはテストは全く問題なかったんだけど、…にもかかわらず人様から同情されてプライドを傷つけられた、っていうのももちろんなくはないけど、それよりもむしろ、私が泣かなければならなかった理由について一ミリも思い至らないような鈍感で無神経な感性が世の中に存在するってことにひどく腹が立ったしやりきれない気分になった」というようなことが書かれていました。
この出来事は大学に入ってからも時折思い出すことがあって、やっぱりあれは「少女」に特有の感性であって、人生のうちにあのように繊細で居ることが許される期間というのは非常に短い。私やR子はその短い時間を目一杯繊細に生きたのだなとなんとなく感慨にふけってみたり。
じゃあ、「繊細でいることが許されない場面」において、今頃R子はどうしているのだろう。そんな風にも思っていたりしたある日、唐突にR子から電話がかかってきて「死のうと思うんだけど」。
R子はこの世には未練は全くないけれど、安直に死を選ぶことは侮蔑する人間でしたが、下手に答えたら場合によっては本当に死にかねないと思って、さりとて気の利いた答えも浮かばず、「えっ! …そっ、それは….困るよ」としか言えませんでした。
R子は弱々しく笑って、「なんか安心した。女の子の声が聞けてよかった」と電話を切りました。今でもなんと答えるべきだったのか良く分かりません。原因が何だったのかも結局聞かずじまいでしたが、結果的に彼女は死なず、今こうして幸せなのだからまあいいのかなと思うのですが。
そう、そうなんですよ。彼女は今幸せだ(きっと)。
それがなんだかとても感動的なのです。

4 Responses to “ハレルヤ”

  1. はちろ Says:

    この方、たしか以前の日記にも出てきましたよね。「私、どんな風に思われてたんだよー」とか言ってた人。ちがいましたっけ。旧校舎の廊下で黒服で泣いてたとか。
    感受性が豊かなのも、感性を開放するのも、言われれば納得できますが、歌のテストでいきなりクラスメートが泣き出したら、私ならびびりますね。正直な話。
    聖歌隊の歌唱テストで全開フルスロットルで感情を開放するのって、オリンピックの予選で、全力出し切るようなもので、そこまで擦る必要はないのでは、と思うのです。本番で、涙流して歌っている人がいたら、感動すると思うんですけど。やっぱり時と場所の問題なのかな。
    ご結婚おめでとうございます。
    お幸せに。

  2. psi Says:

    そうそう、その人です。
    ただし、廊下で泣いてたのは彼女の黒服仲間で彼女自身ではありません…式は黒服じゃなくてよかった…
    >歌のテストでいきなりクラスメートが泣き出したら、私ならびびりますね。
    それが普通の反応だと思います(笑)
    一応彼女のために補足しておくと、あの授業はちょっと特殊な歌唱法をやる授業でして、それで全身を弛緩させることを求められるのですね。テストも歌の上手い下手というより、その歌唱法をきちんと実践しているかを問われるテストでして。
    ある程度できる人ならそれっぽく見えるように適当に歌うということもできるんですが、真面目にやろうとすると「開く」ことが必要なわけでして。
    別に感極まって泣いたとか感情表現として泣いたとかそういうわけではなくて、物理的というか生理的な問題なわけですね。
    まあでも「開いた」無防備な状態でも割と平気な人と、そうでない人がいるわけで、その辺やっぱり分からない人にはわからないだろうな〜と。

  3. ナナミ Says:

    こんにちわ。リニューアルですね。遅くなりましたがおめでとうございます。
    結婚式の参加もお疲れさまでした。知り合いの式っていうのは楽しいものですよね。結婚が自分のことだと考えると、ネガティブイメージばっかりで嫌になりますが(笑)
    ダンナしか知り合いのいない土地に引越ししたりとか、既婚だとパートのおばちゃんにしかなれないとか、子供の有る無しで差別されたりとか。友人たちにはシアワセになってほしいと思うけれど、自分は絶対無理だと思ってしまいますね。

  4. psi Says:

    >ナナミさん
    >結婚が自分のことだと考えると、ネガティブイメージばっかりで嫌になりますが(笑)
    激しく同感です。
    ブーケトスの時、他人事だーい、とばかりにやる気の感じられないポジションに陣取っていたら花嫁のコントロールの悪さのあまり私のほうに飛んできて焦りました。
    ここまできたらキャッチしないと花嫁凹むべ、と思い思い切りジャンプしましたが私の結婚は指先を掠めていきました…
    しかしその飛びっぷりは首に巻いていたストールがはためいてガッチャマンさながらにカッコよかったとか勇者みたいとか(天空に花嫁をもらいに行かねば!)大評判。何しにいったんだ、私…
    >ダンナしか知り合いのいない土地に引越ししたりとか、既婚だとパートのおばちゃんにしかなれないとか、子供の有る無しで差別されたりとか。
    結婚するとしたらこういうのがない結婚を、とは思いますが、そううまくもなかなかいきませんよね…あーめんどくさ。旦那の実家行くのは絶対いやだなぁ。
    >遅くなりましたがおめでとうございます。
    ありがとうございます。…ていうかむしろナナミさんのサイト統合されたんですか? いつもHARLEM STOREから入っていたので気づきませんでしたよ、ごめんなさい。
    こっちから入るようにしたほうがいいのかしら?

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