■青年団第55回公演「火宅か修羅か」
平田オリザの演劇はイライラする。
人間の会話というのはとかくイライラするもので、3分に一回は「……スイマセン~、なんか。アレですけど」みたいな事を言ったりする。当事者はあまり自覚しないが実際の会話もちゃんと記録すればそのくらいの頻度でそういうドッグワードを発しているだろう。
通常、ドラマや演劇、小説や漫画では台詞に直す際にそうしたイライラ要素は整理されてなくなっているか、意図的に強調されて笑いのネタにされている。
ところが平田オリザはそうした「イライラ」に自覚的でありながら、笑いに落とし込むでもなく、批評軸に載せるでもなく、ただ淡々とそのイライラを降り積もらせていく。
そしてさらに、登場人物の善悪の匙加減も絶妙にリアルなのである。皆適度に善人でありながら、臆病で、卑怯で、弱い。しかもその臆病さや卑怯さ、弱さはなにかストーリーを牽引するための役割として必要かといわれるとそんなことは全然ないんである。というか平田演劇にストーリーなどそもそもないんである。
善悪があまりにはっきり分かれた登場人物など、今時誰も望んではいないが、ここまでリアルな人間の煮え切らなさ、イラッと来る善人を自然に書ききっているホンは他にない。
セカイってのは本当にイライラする。
Tags: 演劇
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